先に、これだけマット塗装は「艶を戻す」より「質感を変えない」。研磨やワックスの前に車両の指示を確認する。
マット塗装は、なぜお手入れが難しい?
艶を抑えたマット塗装は、光の当たり方によって柔らかい表情を見せます。そんなクルマに指の跡や雨ジミを見つけたら、普通のボディと同じようにワックスをかければよいのでしょうか。
実は、マット塗装は「艶を出さないこと」そのものが仕上げの特徴です。通常の塗装のように磨いて艶を戻そうとすると、逆に見た目を損ねることがあります。
艶消しの質感は、表面の光の散らばり方で決まる
マットクリア塗装は、表面に微細な凹凸を持たせるなどして光の反射を変え、独特の質感を作ります。汚れが付着すると凹凸に入り込み、落ちにくくなる場合があります。
また、研磨やワックスなどで凹凸が変化すると、その部分だけ光り方が変わることがあります。一部分だけ妙に艶が出ると、かえって目立つこともあるのです。
ただし、すべての艶消し塗装が同じ構造や清掃条件を持つわけではありません。まず自分の車両の取扱説明書で、マット塗装の仕様を確認しましょう。
基本は、汚れを早く、優しく落とす
鳥のフン、虫汚れ、樹液、融雪剤などは、放置すると固着する可能性があります。マット塗装では、後から磨いて傷やシミを消す方法が使えない場合があるため、早めの通常洗浄がより重要になります。
トヨタの一部GR YARIS向け取扱説明書では、水を十分に使って砂や埃を上から流し、柔らかいセーム皮で軽く洗うよう案内しています。これは対象車種への指示であり、すべてのマット塗装に共通する作業仕様とは限りません。
コンパウンドで部分的に磨いてはだめ?
細かな擦り傷があると、コンパウンドで消したくなります。しかし、研磨は表面を削る作業です。マットな質感をつくる細かな凹凸を変えてしまうおそれがあります。
トヨタは対象のマットクリア塗装について、コンパウンドやポリッシャーを使わないこと、傷の質感を戻すには部品全体の再塗装が必要になる場合があることを説明しています。
そのため、小傷を見つけたらすぐに磨かず、傷が表面の汚れなのか塗膜の損傷なのかを区別しましょう。
「マット専用ワックス」なら使える?
専用品という表示だけでは判断できません。トヨタの対象車両では、一般のワックスに加え、マット専用をうたうコーティング剤やクリーナーについても、質感への影響を理由に推奨していません。
一方で、異なるメーカーのマット仕上げやフィルムには、指定された専用ケア製品が存在する場合があります。大切なのは、車両やフィルムのメーカーが認める方法かどうかです。
マット塗装とマットPPFは、同じではない
見た目が艶消しでも、マット塗装と艶消しフィルムでは表面の構造が違います。マットPPFに許可される用品をマット塗装へ使ってよいとは限らず、その逆も同じです。
同じクルマの一部だけPPFが貼られている場合もあります。洗い方に迷ったら、施工履歴を確認することが大切です。
シミや傷が残ったら、無理に直さない
洗浄後に輪郭が残る場合、付着物ではなく表面処理の変化かもしれません。強いケミカルや研磨を繰り返すのではなく、車両メーカーやマット仕上げに詳しい専門店へ相談しましょう。
- 汚れはできるだけ早く、指定方法で水洗いする。
- 擦る前に砂や異物を流す。
- 研磨、ワックス、追加コーティングは車両側の許可を確認する。
- 特殊仕上げを自己判断で再現しようとしない。
オルクラのケアポイント
マット塗装は、艶を足すのではなく、最初の質感を守ることがケアです。きれいにするつもりで表面を変えないよう、早めの穏やかな洗浄を基本にしましょう。