先に、これだけ「革だからクリーム」ではなく、素材と表面仕上げを確かめ、まず清潔に保つことから始める。
革シートだから、定期的にクリームを塗る?
革の財布や靴を手入れしていると、愛車の本革シートにもクリームを塗りたくなります。少ししっとりして、革らしい風合いが増すように感じるかもしれません。でも、自動車用のシートは、身に付ける革製品とは少し事情が違います。
自動車の本革シートは、摩擦や日射、汗、衣類との接触に耐えるため、表面に保護仕上げが施されている場合があります。さらに、座面と側面で本革と合成皮革を組み合わせた車両もあります。まず知りたいのは、「革かどうか」だけではなく「どんな仕上げか」です。
見た目が革でも、全部同じ素材ではない
本革の中にも表面を顔料や保護層で仕上げたもの、自然な質感を生かしたものなど違いがあります。合成皮革も、見た目や手触りが本革に近いものがあります。
そのため、一般的な保革クリームを塗っても、表面の仕上げによっては浸透しなかったり、ベタつきやムラが残ったりする可能性があります。特に、パンチング加工の小さな穴があるシートでは、液剤が内部へ入ることも考えなければなりません。
本革の基本は「塗る」より「汚れを残さない」
トヨタのアルファードとマツダ CX-5の対象取扱説明書では、先に埃や砂を取り除き、車両ごとに指定された洗浄剤を柔らかい布へ含ませて清掃し、残留洗剤を拭き取って日陰で乾燥させる手順が示されています。トヨタの対象説明書では本革と合成皮革で洗剤濃度が異なります。
つまり、何よりも基本となるのは汚れの除去です。砂や衣類から移った汚れをそのままにして、上からクリームを重ねるのは合理的とはいえません。まず指定された清掃で表面を整えましょう。
ただし、説明書にある洗剤の種類や濃度は車両によって異なります。ほかのメーカーの数字をそのまま流用しないでください。
クリームを推奨するメーカーもある
一方、Volvo XC90(2018年モデル向け)の公式資料では、同社指定のレザーケア用品による清掃と保護クリームの使用を推奨しています。これは対象車両に関する案内であり、すべての本革シートに共通する指示ではありません。ここが大切な点です。「本革にはクリーム不要」と一律に決めるのも正しくありません。
考えるべきなのは、対象車両と革の仕上げについて、メーカーが何を指定しているか。純正クリームが用意されている場合は、その用途や塗布方法、施工頻度を確認します。市販品を使うなら、車両・仕上げへの適合と禁止条件が明示されているものに限りたいところです。
テカリが出てきたら、クリーム不足?
運転席のサイドサポートや座面が光ってきたからといって、乾燥が原因とは限りません。皮脂などの付着物で光って見える場合もあれば、表面の保護層が摩耗して質感が変わった場合もあります。
汚れなら指定された方法で改善する可能性がありますが、表面仕上げの摩耗はクリーナーやクリームでは元どおりにならないことがあります。強くこすったり、油分を増やしたりする前に、原因を分けて考えましょう。
パンチングやベンチレーション付きシートは特に慎重に
孔の開いた座面や送風機能付きシートは、液剤を奥へ入れないよう注意が必要です。ヒーター、通気経路、着座センサー、サイドエアバッグなどが備わる車種もあります。
シートへ直接クリーナーを大量噴霧したり、リンサーで広範囲を濡らしたりする作業を、車両の取扱説明書や施工条件を確認せずに実施しないでください。内部へ飲み物が浸透している、警告灯が出ている場合は清掃より点検を優先します。
自分で手入れするなら、順番を決めて
- まず取扱説明書とシートの材質・仕上げを確認する。
- 掃除機や柔らかい道具で砂・埃を除去する。
- 指定された洗浄方法で汚れを取り、洗剤を残さない。
- 完全に乾燥させた後、必要な場合だけ指定の保護処理を検討する。
- 摩耗、ひび割れ、色の剥離がある場合は専門家に相談する。
何も塗らない方がよい場合もある
清潔で状態のよいシートなら、追加のクリームが必要ない場合もあります。逆に、メーカーが指定する保護処理がある車種では、その条件に沿うことが適切です。
革の質感を長く楽しむために、クリームの量ではなく、素材の理解と手入れの適合を重視しましょう。
オルクラのケアポイント
本革シートだからといって、保革クリームを塗ることが必須ではありません。まずは砂や皮脂を残さず、車両の指示に合った方法で清掃すること。クリームを選ぶのは、その革の仕上げに必要だと確認できてから。使わない選択も、正しいレザーケアです。